この記事の結論
- 改葬許可には原則として墓地管理者の埋蔵証明書が必要ですが、出してもらえない特別な事情があるときは、市区町村長が認める代わりの書面で申請できる場合があります。
- 2026年1月23日付の厚生労働省の事務連絡(Q&A)で、代わりの書面の例としてお墓の写真や、提出できない経緯を書いた申述書などが示されました。
- まずはお寺と落ち着いて話し、やりとりを記録に残したうえで、申請先の市区町村に相談しましょう。争いになった場合は弁護士に相談します。
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埋葬証明書と埋蔵証明書の違い
インターネットでは「埋葬証明書」という言い方もよく見かけます。法律上「埋葬」は遺体を土に葬ることを指し、焼骨をお墓に納めることは「埋蔵」、納骨堂に納めることは「収蔵」といいます。そのため、墓じまいで必要なのは正確には埋蔵(収蔵)証明書です。ただ、自治体の様式では「埋葬証明」と書かれていることもあり、実務上は同じものを指していると考えてかまいません。
埋蔵証明書は、墓地の管理者が「この方の遺骨が当墓地に納められています」と証明する書面です。墓地埋葬法施行規則2条2項1号が、改葬許可申請の添付書類として定めています。寺院墓地なら、通常はご住職が証明します。
なぜお寺の証明が必要なのか
改葬許可を出す市区町村は、実際にどこに誰の遺骨があるかを把握していません。そこで、現場を管理している墓地の管理者に事実を証明してもらう仕組みになっています。
お寺が証明書を出さない理由としては、次のようなものがあります。
- 墓じまい(離檀)そのものに反対している
- 離檀料やお布施の金額で話がまとまっていない
- ご住職が亡くなり、後任が決まっていない(管理者が不在)
- お寺との連絡が途絶えていて、話ができていない
総務省東北管区行政評価局の資料でも、住職から墓じまいを反対されたという相談や、管理者が不在で証明書を作ってもらえないという相談が紹介されています。
証明書がなくても改葬許可を取れる場合がある
施行規則2条2項1号には、括弧書きで「これにより難い特別の事情のある場合にあっては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」でもよい、という趣旨の定めがあります。つまり、埋蔵証明書がどうしても得られない事情があるときは、代わりの書面で申請できる余地があるということです。
昭和30年の国の回答
この扱いは新しいものではありません。昭和30年2月28日付の国の回答(衛環第22号「墓地改葬許可に関する疑義について」)では、管理者が証明を拒んだ場合、市町村はまず管理者に証明書を出すよう指導し、それでも拒まれたときは埋蔵証明書に代わる立証の書面で扱ってよいとされています。
2026年1月23日の厚生労働省Q&A
ところが、この回答を把握していない市町村も多く、窓口で「何を出せばよいかわからない」という声がありました。こうした状況を受けて、厚生労働省は2026年1月23日付で事務連絡「改葬許可申請において埋蔵証明書の添付により難い特別の事情があると認められる場合の取扱い(Q&A)について」を出しました。
このQ&Aでは、代わりの書面の例として、墳墓(お墓)の写真や、埋蔵証明書を提出できない経緯を記載した申述書などが挙げられています。ただし、具体的にどの書面を求めるか、代わりの書面で認めるかどうかは、申請を受ける市町村長の判断です。写真と申述書を出せば必ず許可される、というものではない点に注意してください。
代わりの書面として考えられるもの
総務省の資料で紹介された市町村の事例を見ると、次のような書面が組み合わせて使われています。
| 書面 | 何を示すか | 実際の事例 |
|---|---|---|
| 申述書(事実関係の上申書) | 証明書を得られない経緯 | 寺院が作成を拒んだ事例で使用 |
| お墓・墓石・墓誌の写真 | 遺骨が納められているお墓の存在 | 管理者不在・拒否の両事例で使用 |
| 墓地の使用許可証 | 申請者側がお墓の使用者であること | 寺院が拒んだ事例で使用 |
| 除籍謄本・改製原戸籍など | 故人の存在と続柄 | 両事例で使用 |
| 火葬許可証の写し、過去帳など | 死亡と埋蔵の事実 | 市町村担当者から例として挙がったもの |
総務省の資料には、寺院が「改葬を認めていない」として証明書の作成を拒み続けた事例で、市町村が寺院に複数回説明したうえで、申請者の上申書、使用許可証、墓石・墓誌の写真、除籍謄本などをもとに改葬を許可した例が紹介されています。
市区町村への相談の仕方
代わりの書面で申請するかどうかは、申請先の市区町村が判断します。いきなり書類を送るのではなく、まず相談するのが近道です。
相談前に準備しておくこと
- お墓の所在地、名義人、故人の氏名・死亡年月日(わかる範囲)
- 改葬先が決まっていること(受入証明など)
- お寺にいつ、誰が、どのように証明をお願いしたか
- お寺の回答(断られた理由、条件など)
相談のときに伝えること
- 「埋蔵証明書をお願いしたが、出してもらえない」という事実
- 2026年1月23日付の厚生労働省の事務連絡(Q&A)があること
- どのような書面を用意すれば審査してもらえるか
窓口の担当者がQ&Aを把握していない場合もあります。その場合は、総務省東北管区行政評価局の公表資料(出典に記載)を示すと、話が進みやすくなります。市町村はまず管理者への指導を行うとされているため、市町村からお寺へ連絡してもらえることもあります。
申述書に書く内容の例
申述書の様式は決まっておらず、申請先の市区町村が様式を用意している場合はそれに従います。様式がない場合は、次のような項目を事実に沿って書くのが一般的です。
- 申述する人(申請者)の住所・氏名、故人との続柄、墓地使用者との関係
- お墓の所在地と名称、区画の番号
- 埋蔵されている故人の氏名・死亡年月日(わかる範囲)
- 改葬の理由と改葬先
- 墓地の管理者に埋蔵証明をお願いした日時と方法(訪問、電話、手紙など)
- 管理者の回答と、証明書を出してもらえない理由(聞いている範囲)
- 添付する書面(写真、戸籍、使用許可証など)の一覧
- 「上記のとおり相違ありません」という申述の一文、日付、署名
書くときは、お寺への不満や推測ではなく、日付と事実を中心にまとめます。市区町村が判断しやすいよう、添付書類と内容を対応させておくと親切です。
やりとりの記録の残し方
代わりの書面で申請する場合、「お寺にきちんとお願いしたが、出してもらえなかった」ことを説明する必要があります。そのためにも、やりとりの記録を残しておきましょう。
- 手紙で依頼する:口頭だけでなく、埋蔵証明のお願いを書面で送ります。控えのコピーをとり、配達の記録が残る方法で送ると、いつ依頼したかが明確になります。
- 会話のメモをとる:電話や面談の日時、相手、話の内容を、その日のうちにメモします。
- お墓の写真を撮る:墓石の正面、墓誌(故人の名前が刻まれた石)、区画全体、周囲の様子がわかる写真を撮っておきます。
- 関係書類を集める:墓地使用許可証、過去の管理料の領収書、除籍謄本などを手元にそろえます。
記録は、相手を責めるためではなく、事実を整理するためのものです。感情的な言葉は書かず、日時と事実を淡々と残しましょう。
まずはお寺と話し合うことが大切
代わりの書面は、あくまで「特別な事情がある場合」の扱いです。昭和30年の回答でも、宗教感情に沿って円満に進めることが重視されています。国民生活センターも、墓じまいは家族や親族も交えてお寺とよく話し合うよう呼びかけています。また、墓じまいには改葬許可のほかに区画の原状回復などの手続きも必要になることがあるため、墓地の契約内容を確認し、管理者と話し合いながら全体を進めることが大切だとされています。
長くお世話になったことへの感謝を伝え、墓じまいをする理由(遠方で通えない、継ぐ人がいないなど)を丁寧に説明すると、話が進むことも少なくありません。
争いになったら弁護士に相談を
次のような場合は、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。
- 遺骨を返さない、墓地に立ち入らせないと言われた
- 高額な支払いを条件に証明を拒まれ、話し合いが進まない
- お寺から法的な請求を受けた
報酬を得てお寺との交渉や争いの代理を行えるのは、原則として弁護士です(弁護士法72条)。行政書士は交渉の代理はできませんが、代わりの書面(申述書など)を含む改葬許可の申請書類の作成や提出はお手伝いできます。費用の心配がある場合は、法テラス(日本司法支援センター)で相談窓口を案内してもらえます。
よくある質問
Q1. 埋蔵証明書がないと、絶対に改葬できないのですか? 原則は必要です。ただし、得られない特別な事情があるときは、市区町村長が認める代わりの書面で申請できる場合があります。認めるかどうかは市区町村の判断です。
Q2. 申述書には何を書けばよいですか? お墓と故人の情報、お寺にいつどのように依頼したか、どう回答されたか、なぜ証明書を出せないのかを、事実に沿って書きます。様式は申請先の市区町村に確認しましょう。
Q3. お寺に黙って遺骨を取り出してもよいですか? おすすめしません。墓地の使用規則や契約に反するおそれがあり、トラブルが大きくなりかねません。取り出しの方法も含めて、市区町村や弁護士に相談してください。
Q4. ご住職が亡くなっていて証明してくれる人がいません。 管理者不在の場合も、写真や戸籍などで改葬が許可された事例があります。宗派の本山や地域の寺院が対応できる場合もあるため、あわせて市区町村に相談しましょう。
当事務所でできること
櫻井高貴行政書士事務所では、市区町村への事前相談の準備、申述書など代わりの書面の作成、改葬許可の申請・受け取りをお手伝いしています。お寺との交渉の代理は行いません。争いになっている場合は、弁護士へのご相談をご案内します。
- 埋蔵証明書が出ないときの申述書等(オプション):27,500円
- 改葬許可 代行プラン:44,000円(1墓所・遺骨2柱まで)
出典
- 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(2条) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei16/index.html
- 総務省東北管区行政評価局「墓じまいに関する情報収集結果」(2026年1月30日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001084523.pdf
- 総務省東北管区行政評価局 別添1「墓じまいに関する情報収集結果」(市町村の事例) https://www.soumu.go.jp/main_content/001053242.pdf
- 総務省東北管区行政評価局 別添2「相談対応者向けQ&A(厚生労働省確認済み)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001053244.pdf
- 熊本市「墓じまい 離檀料に関するトラブルに注意」(国民生活センター「見守り新鮮情報」第424号を参照) https://www.city.kumamoto.jp/kiji00343105/index.html
- 法務省「法テラスの業務」 https://www.moj.go.jp/KANBOU/KOHOSHI/no91/7.html
- 総務省「行政書士制度」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/gyouseishoshi/index.html
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